まさかその弐があるとは思わなんだ(挨拶


 前回の続き。今回はサイドボードについて。具体的な解説の前に注意点をいくつか。

 
 あなたはサイドカードを入れれば入れるほど、デッキが弱くなって行く事を強く認識するべきだ。ANTと云うデッキの一番の利点は、その手札の整理能力を活かした素早いターンでのストームコンボの成立であり、メインのレシピはそのテーマを実現する為に最適化されている。(手札破壊など多少の不純物は見られるが、その他全てのカードはコンボ成立の一点に向かいデザインされている)よって、その最適化されたリストから数枚のカードを抜き、同じ枚数のサイドカードを入れる(多くは妨害カードだ)ことは手札の整理能力を下げ、コンボの減速を意味する。なので、ANTに於ける理想のサイドボーディングとは極小枚数に留めるべきなのだ。
 その「極小枚数」の具体的な数の問題だが、僕の答えはメインの手札破壊を含めて9枚だ。9という数字は初手7枚に少なくても一枚以上含まれるという期待値8.51の端数切り上げの値である。これからも分かるのが、ANTと云うデッキに置いての妨害は必須ではないという事実だ。あなたが狙うべきは素早いターンの決着であり、妨害は一度挿む、若しくは必要に駆られた時に探し出してくるのが一番良い動きである。


 前置きが長くなって申し訳ない。それでは改めてリストを確認した後にサイドカードの解説に移ろうと思う。


 「ANT」
グランプリ・千葉2016 トップ8 / レガシー (2016年11月26~27日)[MO][Hand]
2 《島》
1 《沼》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
3 《霧深い雨林》
2 《溢れかえる岸辺》
-土地(15)-

-クリーチャー(0)-
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》
4 《水蓮の花びら》
4 《渦まく知識》
4 《暗黒の儀式》
4 《ギタクシア派の調査》
4 《思案》
2 《定業》
3 《陰謀団式療法》
3 《強迫》
4 《陰謀団の儀式》
4 《冥府の教示者》
1 《巣穴からの総出》
1 《炎の中の過去》
1 《苦悶の触手》
1 《むかつき》
1 《闇の誓願》
-呪文(45)-
2 《ザンティッドの大群》
2 《金属モックス》
1 《蒸気の連鎖》
1 《見栄え損ない》
1 《狼狽の嵐》
1 《外科的摘出》
3 《突然の衰微》
1 《ハーキルの召還術》
1 《クローサの掌握》
1 《苦悶の触手》
1 《Tropical Island》
-サイドボード(15)-


・サイドカードの解説

苦悶の触手1
 追加の勝ち手段だ。相手の妨害が厚く、LED+冥府からの過去ルートやむかつきルートが狙い辛い相手への直接触手ルート(場合によっては二回に分ける)ルートを取る時に必要となる。冥府がある状況で触手を2枚に増やし、8マナ以上を確保して、一度に二回仕掛けるのは良くある動きである。

金属モックス2
 追加のマナ加速だ。エルドラージやデスタクなど、少しでも長い勝負になると分が悪くなるマッチでサイドインされる。また、0マナのカードであり、チャリスを1で置かれた時も0マナと2マナのマナ加速によってコンボが可能となるのも見逃せないメリットだ。但し、加速として使用する際にはアドバンテージを失ってしまうので、ゲームが長引いたときには相応のデメリットを背負うこととなる。

見栄え損ない1
 各種ヘイトベアの対処から、デルバーや死儀礼を除去してゲームの減速化の出来る汎用性の高いカードだ。注目すべき点は黒1マナのコストである。ヘイトベアの主な対象であるサリアを3マナ以上で除去する動きはテンポロスでしかないし、それらのデッキの多くは不毛の大地を用いてくる為に、青黒以外の色マナ(デュアルランドを出すことになる)で対処することは自分の首を絞めることに為りかねない。これらをテンポのロス無く除去することによって、余ったマナで手札の整理を図り、素早いコンボの始動に備えるのが目指すべき動きである。

外科的摘出1
 二点のライフと引き換えにフリーキャスト可能な墓地対策カードだ。多くはリア二やドレッジ、または墓地を利用するコンボであるANTにサイドインする。手札破壊を併用することで、Sntなどのコンボパーツを根こそぎ抜くことも可能だが、過信はいけない。それらの使い方を目指す時には、外科的のみを引いてしまった場合に一枚のカードの働きが出来ないことがある為だ。また、カードの能力を解決後に相手のデッキを強制的にシャッフルするため、手札破壊に合わせられた渦巻く知識で隠したカードを引かれることなく埋め込めるプレイにも使用できるが、この使い方をした時にも、カードを1枚損をする可能性が高いので、積極的に狙うものでもないと考えている。あくまで、メインの用途としてサイドインしたときに、追加で狙えて、そのプレイがクリティカルになると判断したときにのみ選択すべき行動であろう。

ハーキルの召喚術1
 ヘイトアーティファクト対策。異なるヘイト茶で対策された場合にも、1枚で場を対処出来るのが残響する真実には無い利点である。追加でモックスダイアモンドや薬瓶が戻るのも見逃せないメリットで、これにより相手は大きく行動が阻害されるだろう。また、サイドインしたときに相手にヘイト茶をプレイされなかった場合には、自分を対象に撃つことも出来る。アーティファクトのマナ加速×2のストームを稼ぐことに寄与するので勝利は目前だろう。

トロピ1
 メインボードでは緑マナは不要なのでサイドに置くことにしている。ANTは多くの人が考えている以上に数マナに繊細なデッキであり、1マナ足りなくて負けというのは良く見かける状況だ。メイン戦でのトロピを不毛されて負けは、その最たる例でそれは明確なデッキ構築ミスと考えている。緑マナの必要な相手(多くは土地に干渉してこないデッキ)にサイドインし、2枚目の島と入れ替えることが多いだろう。

ザンティッドの大群2
 ヘイトインスタントアクション枠。多くはカウンター(ウィル、フラスター、REBなど)だが、誘発能力を解決してしまえば、ヴェンデリオンや外科的摘出までケア出来るのは大きい。生物であることはメリットともデメリットとも云える。メリットとしては、ANTをメタするときの定番サイドとも云えるフラスターにあたらなく、療法が墓地にある時にはFBに寄与する点だ。デメリットとしては、生物であるので対処が比較的容易であり、効果の発動にはアタックすることが必要なので、召喚酔いというタイムラグが生じる点だ。しかし、1マナのカードで仕掛けやすく、カウンターされたとしても2-1交換を取れる頼もしいサイドカードであることは間違いない。

蒸気の連鎖1
 各種パーマネント対策としてのバウンス呪文だ。青1マナと非常に軽く、また自分のペタルやLEDをバウンスすること(土地を生贄でコピーする)でストームカウントへも寄与するので便利だ。メインの使い方としては、見栄え損ないやハーキルの追加として用いることが多い。白力戦などのマイナーな対策をケアするときに一応入れるのにも有用で、1枚あるだけで過去の存在を考えると二回触れるチャンスを作れるのは覚えておいて損の無い知識である。

狼狽の嵐1
 コンボ相手の牽制、儀式呪文へのソフトカウンターから守るカードだ。特にSbtやリア二メイトには効果が高く、ANTからのカウンターは予測し難い点も後押ししている。守るときに強いカードであり、出来る限りはそのような使い方をしたい。インスタントのアクションが連鎖したときに合わせることでアドバンテージを得ることも出来るので、使用者のスキルが試されるカードでもある。デメリットはカードの特性から能動的に使うことは非常に難しい点だ。極論、相手が最後まで動かなかった場合には手札に腐ってしまい暴勇の妨げになる(自分の呪文に撃つことは可能だが相手がそのタイミングで妨害を挿むことを考えると現実的でない。LEDがある場合も使わずに捨ててしまうことになるので、その恩恵を受けることは出来ない。

突然の衰微3
 相殺対策だ。敢えて一つのカードの対策として言い切ったのにはそれなりの理由が存在する。衰微を各種ヘイトベアやヘイトアーティファクト、厄介なクロックに対してサイドインする人を良く見るが、僕はそれらは明確なサイドミスだと考えている。ヘイトベアetcを用いてくる相手は十中八九デッキ内に不毛の大地を備えていて、その他にもマナを否定する戦略を取っているものがが多く、衰微の為に多量のデュアルランドを持ってくる動き、衰微の緑黒の2マナというマナ拘束の強く重いコストはそれらの相手のプランを後押ししてしまう危険を孕む為だ。またテンポ的な問題も存在する。相手の2マナのサリアを3マナの衰微で対処しても対しておいしくはないし、1マナのデルバーや死儀礼相手も同様だ。2マナ土地からのアメジストの棘やチャリスへ対してデュアルランド2枚を置いてからの衰微も現実的ではない。それらを対策するにはもっとスマートなものが必要ということである。これらを考慮に入れて改めて衰微と云うカードを見ると、その殆どが相殺専用(ひいては奇跡専用ってことだ)のスペースであることが分かる。しかし、対奇跡においての活躍は素晴らしいもので、相殺は勿論だが、エンドに独楽に撃ちライブラリートップへ隠したカウンターを燻り出す動きは良くあるものだ。状況によっては、相手の生物へ撃つことも可能なので、奇跡に勝つためには無くては為らないスペースと云えるだろう。

クローサの掌握1
 追加の衰微のようなスペースだ。相殺対策として用いられる衰微だが、翻弄する魔道師などで禁止に、外科的摘出で纏めて抜かれてしまった場合に、相殺(や独楽)に触るために重宝する。衰微とは違いカウンターされる可能性のあるところには注意したい。知識や独楽などでライブラリーのトップを操作したあとの相殺には、相手のドローのアクションに合わせるなどをして、3マナのトップをケアする動きが重要だ。また、衰微と比較して色マナ拘束が低い点にも注目したい。トロピから撃つ場合には不毛を食らってしまうのは同じだが、ペタルやLEDなどから撃つ動きは相手からも警戒され難いので効果的だ。衰微と共にメリット、デメリットを把握して使い分けたいカードである。


 如何だっただろうか?サイドカードについて、僕の考えることを思いつくままに書き連ねて見た。これらの考えとは違うものを持っている人も多いと思うので、そのときは是非コメント欄やDMなりでぶつけて欲しいと思う。ANTのサイドボードはまだまだ発展途上のものでこれから如何様にも洗練されていくと考えているので。



 メタ上位のデッキに対しての具体的なインアウト&サイドボード後のプランにも書いてみようと思いましたが、力尽きました。ご要望が在れば、また後日に。



 さらばじゃ!

コメント

すぴなー
2016年12月6日0:52

解説お疲れ様です。まだまだレガシーの知識も少ないもので、ANTに興味があったこともあり前記事共々とてもいい勉強になりました。

些細な点ですが、ご報告まで。
本旨1段落目2文目
誤:メインのレシピはそのテーマw実現する為に最適化されている
正:メインのレシピはそのテーマを実現する為に最適化されている

岩石系男子モアイ
岩石系男子モアイ
2016年12月6日19:49

各アーキタイプのサイドインアウト希望です。特にデルバー、バグカスあたりで

AKKA
2016年12月6日20:35

>すぴなーさん
 ありがとうございます!直しておきました。

>もあいちゃん
 続きはWebで!(ここもウェブだが

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