心構えや考え方など(挨拶


 同じカード同じデッキを使用しているのにも関わらず、勝率の大きく異なったプレイヤーが存在していることに、疑問を感じたことは無いだろうか?僕は何時も疑問に思っている。ありふれた回答としては、片方のプレイヤーが十分に上手く、また一方は余り上手くないというものが挙げられるが、これはどのようなことなのだろうか?僕自身は一般的で平凡なプレイヤーだが、友人知人には上手いと称される者(その中にはプロと呼ばれる人も存在する)が居て、幸運なことにそれらの人達の意見を聞くことや、プレイを見る機会に恵まれたので、以下で僕の考える「上手いプレイヤー」の話をしたい。


①無駄なことを考えない。
 上手いプレイヤーは無駄なことを考えない。まず挙がるのは、他者の評価を気にして失策を重ねないということだ。自分のプレイに自信が出てきた中級者がよく陥る状況だが、それらのプレイヤーは酷いミスをしてしまった場合に、相手に悟られたくないという理由から、二重のミスをしてしまうことがある。重要なスペルを打ち消し忘れてしまったときに、恥と考え、更なるスペルも打ち消さないことによって、自分は打消しを持っていなかったのように振る舞い、自己の合理化を図る。これは自分の精神状態を保つには良いプレイかもしれないが、マッチにおいては最悪なものになる。多くのゲームは一枚のカードで決まることは少ないからだ。なので、一つのミスを犯したとしても、その後にキチンとプレイすれば拾えるゲームがあるのだ。この行動はそれらの可能性を完全に見逃している。上手いプレイヤーはミスを恥とは考えずに切り替えが早い。ゲーム中にそれらのミスについて考えても帳消しになる訳では無いので、「今」のゲームを勝つために頭を使う。相手のミスについてではなく、自分がこれからミスをしない為に思考を割くのだ。
 自分ではコントロール出来ないことに、決まりの悪さやストレスを感じることも、比較的おおく見られる状況だ。マッチの開始に至って、ダイスロールの弱さやマリガンを重ねてしまった自分の不運を嘆く。ゲームをマナフラッドやマナスクリューで落としてしまった時に、サイドボード中やマッチの後に相手を罵る。上手いプレイヤーはこれらの無駄な行為をしない。彼らは、徹頭徹尾、そのマッチを勝つために最善を尽くそうとする。ダイスロールはタダの結果として受け止め、それに対しての戦略に頭を働かせる。マリガンは勝つためにするものであって、不運ではない。ダブルマリガンの可能性も検討するだろう。事故で落としたゲームは深く考えないで、すぐに次のゲームを勝つために手を動かす。マッチを落としてしまった時には、次のマッチに向かって、あるいはその落としたゲームについて何か他に出来ることが無かったかと、考えを巡らせるだろう。
 多くのプレイヤーは勝利や敗北のそれ自体を気にするが、上手いプレイヤーは勝利や敗北に至ったその過程に重きを置く。どのような状況で勝ち負けたかを把握することは、自分の長所や短所の発見に繋がる。勝利や敗北は結果でしかないのだ。自分の上達にはそれらの結果よりも過程が重要なことも、上手いプレイヤーは知っているのだ。
 相手が格上のプレイヤーだからといって怯えない。それらの感情を覚えることは理由無きストレスを生み出し、自分のパフォーマンスに影響が出るからだ。上手いプレイヤーは格上の相手を相対して、ミラーマッチで不利になるとしても、自身の能力を最大限に引き出せる最良のデッキを使うことが、最大の勝率に寄与することを知っている。
 上手いプレイヤーは無駄なことを考えない。その思考はマッチを勝利するため、勝率を上げるために巡らせられる。


②戦略的な判断に基づいて、戦術的にカードを用いる。
 同じカード同じデッキを使用しているのにも関わらずに、勝率が大きく異なる理由として、最も多く挙げられるのはこの部分だ。上手いプレイヤーは自分のデッキの戦略を良く理解し(より良いプレイヤーは相対した相手のデッキの戦略にも通じている)、戦術的に効果的なタイミングでカードを使用することが出来る。では、MTGにおける戦略、戦術とはどのようなものなのだろうか?

・戦略とは?
 ゲームまたはマッチを通して考慮される全体的なプランのことだ。良く使われる「ゲームプラン」という言葉も、戦略の一つだと認識して支障ない。最もありふれた戦略的な問いは「どちらがビートダウンか?(who is the beatdown?)」だろう?そのマッチにおいて、攻める側、守る側をキチンと認識出来るのであれば、自分(さらに相手の)の戦略について、十分に理解しているということになる。
 戦略は抽象的なもので、あるアーキタイプで時代が変化しても、同種のカードを入れて戦略を実現していることはあっても、戦略が特定の一つのカードに依存するということは殆どない。コントロールでは、重く強力なスペルで勝利するための時間を得るために、軽い除去やカウンターを利用する。アグロでは、なるべくコストが低く効果的な脅威を用い、ビートダウンを成立させるための道を少ない除去で切り開く。しかし、戦略を定義付けるのは決してカードそれ自体では無く、カードがどのように使われるかだ。
 多くのデッキにおいて、自身の取る戦略は、相手のデッキとは無関係だ。バーンではコストパフォーマンスに優れた低マナの生物の群れと、溢れんばかりの火力によって、どんな相手だろうと序盤のうちに圧倒してしまおうとする。奇跡はなるべく一対一以上の交換を繰り返し、可能な限りゲームを引き伸ばし、独楽や各種キャントリップでの潜在的な質のアドバンテージによって息切れを防ぎ、有利な立場を得る。ベルチャーは相手がなんであろうとマジックをさせる前に終わらせてしまおうとする。
 この原則の例外は、現状のスタンダートで良く見られる、ミッドレンジというアーキタイプだ。それらはゲームの中盤に優位を得るために、自分よりも攻撃的な相手には、序盤の主導権を譲り「折り返し地点」までは、コントロールとして振舞う。自分よりも防御的な相手やコンボには、アグロ戦略を取る。いずれにせよミッドレンジは、中盤での勝利を目指す訳だが、相手の動きによって異なるルートを使い分けるのである。 

・戦術とは?
 戦略を実現するための、個々の場面でのプレイや判断のことだ。よくある例としては、次のようなものが挙げられる。単体除去を温存して、全体除去の効果を高める。損なアタックを繰り返し、相手のライフを火力圏内に落とし込む。ドロースペルをカウンターせずによりクリティカルな脅威のために取って置く。重要なのは、これらの判断が何時如何なる状況でも守るべき強いルールでは無いということだ。デルバー相手に知識と終末を持っているからといって、剣鋤を撃たずに3/2飛行に殴られるのは良くないプレイだ。
 戦略的な判断と異なり、戦術的な判断は常に状況に応じて行われる。ボード、ライフ、自分の手札、相手の手札に在り得るカード、ゲーム中の相手のプレイ、など、数え切れないほど多くの要素を含んでいる。しかし、最も重要なのは、あらゆる戦術的な判断は自分の戦略に基づいて行われるということだ。戦略無くして正しい戦術的な判断は下せない。マクロな視点でのゲームプランを持ち、それを実行しているということは、実現可能な戦略を立て、そこから導かれた戦術的な判断をしているということになる。

 上手いプレイヤーは、あなたよりも戦略を深く理解し、戦術的に効率良くカードを使用することが出来る。もし、今よりも上手くなりたいのであれば、自分よりも上手いプレイヤーにマッチにおいての戦略を尋ねることが、一助となるかも知れない。


③プレイングに一定のテンポがある。
 テンポといっても、ゲーム上での話しでは無い。見てそのまま、ゲームをプレイする彼らの動きの問題である。上手いプレイヤーほど、一定のテンポで(リズムと言い換えても良い)自分のターンを進めている。逆に余り上手くないプレイヤーは、早くプレイしすぎて重大なミスを引き起こしてしまったり、プレイが遅すぎてそもそもの試合に決着が付かずに、引き分けの憂き目に会う。
 考えるに、上手いプレイヤーは自分の能力について正しく理解しているのだろう。なので、分を超えた早いプレイはしない(勿論時間が無いときは例外だ。彼らはマッチに勝利するために全力を注いでいて、引き分けたい訳では無い)し、また、試合時間は有限であるために、極度に遅いプレイもしない。自分がベストのパフォーマンスを得られるプレイスピードを知っていて、それをなるべく守ろうとする。余り上手くないプレイヤーは、未だに自分の能力について正しく理解出来ていないので、適切なプレイスピードを保てずに相手に引き摺られることがしばしば起こる。「自分のテンポ」を守れないというのは、思っている以上に苦痛でストレスの溜まる状態だ。ゲームが優勢ならまだしも、劣勢でより思考を巡らせなければ逆転出来ないような状況の場合、これらの負荷は致命的にもなりえる。
 もし、あなたが、相手のプレイスピードに引き摺られることが多いと感じるならば、未だにベストなパフォーマンスを発揮できる「自分のテンポ」を知らないことになる。よって、勝つための第一歩として、自分の能力について正しく理解し、自分に合ったプレイスピードを模索するべきだ。それを見つけられたのならば、たとえ相手に急かされたとしても、キチンと意見を述べ、素早く盤面を確認、その場で適切なプレイに辿り着けるだろう。


 どうだっただろうか?以上が僕の考える「上手いプレイヤー」だ。僕自身は未だその境地に至ってはいないけれども、少しでも近づけるように、これからも努力を続けたいと思う。


 このエントリーを書くのに「BBDのマインドゲーム」と「ロス・マリアムの戦略と戦術」という記事を参考にさせて頂きました。原文はとても素晴らしいものなので、興味のある方は検索してみて下さい。


 さらばじゃ!


コメント

カヂノ
2017年7月14日9:33

プレイングに関する記事ありがたいです!なかなか上手い人と意見交換する機会がないので、すごくためになりました!

丸井キャプテン
2017年7月14日10:45

素晴らしい記事でした!
MO中心かつ地方住みで上手いプレイヤーの思考に触れる機会が多くないので、こういう記事はありがたいです。

AKKA
2017年7月14日19:51

>カジノさん、丸井キャプテンさん
 ありがとうございます!少しでも皆さんの力に成れたのなら幸せです。これからも不定期ですが、色々なことを書いていくと思うのでよろしくお願いします。

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